無侵襲血圧計測システムの開発に関する研究
研究者:市井健斗(学部生)(大学院)担当教員:田中志信(教授)
背景と目的 Introduction
循環器病は,我が国において高い死因割合を占めていて,血圧と非常に関係が強いことが知られています.したがって,個々人による高血圧の予防や早期の改善が重要です.それには運動の実施は有効な手段ですが,高血圧の方にとっては同時に危険も伴います.そこで,運動中の血圧計測が行うことで,リスクチェックに利用しようと考えています.また,スポーツ医学の分野などにおいても,運動中に血圧を計測し,トレーニング指標として使用できるのではないかと考えています. このような需要があるにもかかわらず,運動中の血圧に関するデータは少ないのが現状です.これは,運動に伴う激しい体動外乱により,従来の上腕または手首型血圧計では,安定した運動中の血圧計測は極めて難しいことが原因です.運動中の計測に特化した血圧計も市販されていますが,心電図の同時計測が必要であり汎用性に難があるなど一般に広がるまでには至っていません. そこで,計測部位として運動負荷時でも外乱の混入が比較的少ないと予測される外耳道内に着目し,容積振動法[1]による運動時でも使用可能な血圧計測システムの確立を目標に研究を行っています. |
研究方法 Method
本研究では容積振動法による外耳道内での血圧計測システムを開発しています.容積振動法は,動脈血管を外部から加圧(または減圧)する圧力値と,その過程の血管内容積変化ΔVを検出することにより血圧を推定可能な手法です.すなわち圧迫機構とセンシング部が一体となったプローブを製作して実験を行う必要があります.本研究では,圧迫機構としてバルーンを使用することを考案しました.これにより形状が複雑な外耳道内であっても,バルーンは外耳道に沿って膨らむため,血管の圧迫が可能となりました.また,ΔVの検出は近赤外光を用いて,光電容積脈波(Photoplethysmography:PG)として検出します.試作したプローブの画像が図1のようになります. そして,図2は外耳道用プローブの構造を表した図になります.バルーンは2重となっており,その間にPGセンサが挟まれる構造となっています.1層目のバルーンは,チューブを介して空気を送り込むことでPGセンサと共に対象血管を圧迫する役割を果たします.そして2層目のバルーンは,1層目のバルーンを膨らます際のPGセンサのズレを防止する役割を果たします.このプローブを実際に外耳道内に挿入し,実験を行い研究を進めています. |
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参考文献等 Reference
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